【声明】芸能人の移籍に金銭補償制度導入へ、事務所とのトラブル防止について


2019年11月28日

【声明】芸能人の移籍に金銭補償制度導入へ、事務所とのトラブル防止について

「芸能人と所属事務所との移籍などをめぐるトラブルを防ごうと、国内最大の業界団体「日本音楽事業者協会」が多くの事務所で使われている契約書のひな型を見直し、芸能人が移籍する際に金銭で補償する制度を導入する」との報道に接しました(2019年11月26日、NHKニュース)。

私たちは、大手芸能事務所を会員とする「日本音楽事業者協会」が芸能人の移籍について金銭補償制度を導入するという方針に対し、賛成いたします。

従来から、芸能人らが芸能事務所を移籍もしくは独立する際、芸能人と芸能事務所がトラブルになる例が多数みられます。その原因の一つとして、芸能事務所が芸能人の育成にかけてきた費用を回収することができないと主張するという事情があります。移籍金制度は、このような育成費用の回収を認めるものであり、芸能人の移籍・独立を促進し、自由な芸能活動を促進するという効果があります。この点については、私たちも従来から繰り返し指摘しており、2018年3月16日に当協会が公表した「『人材と競争政策に関する検討会』報告書に対する意見」においても、移籍制度の導入については積極的な立場を表明しました。

もっとも、今後、移籍金の算定方法が不相当に高額であったり、不合理なものになったりした場合には、新たなトラブルが生じかねないと、私たちは懸念します。そのため、移籍金の算定方法については合理性及び透明性が重要です。合理性及び透明性が確保された移籍金制度でなければ、実質的に芸能人の移籍を妨害する制度になりかねません。また、投資回収のリスクというのは、いかなるビジネスにも当てはまるものです。「移籍金を用意できる事務所がなければ移籍できない」というのは、芸能事務所の投資の失敗を、芸能人に転嫁させるという危険性を孕んでいます。

私たちは、各芸能事務所に対して、移籍金制度を導入するとともに、新しいトラブルを生まないよう、移籍金の算定方法については合理性及び透明性の確保について強く求めていきます。
今後も、私たちは、芸能人が安心して活動し、自由かつ公平な競争ができる芸能業界にするために発信して参ります。

2019年(令和元年)11月27日
日本エンターテイナーライツ協会