【ご報告】愛媛ご当地アイドルの自殺に関する第3訴訟(ご遺族から事務所に対する未払賃金請求訴訟)について
愛媛ご当地アイドルの自殺に関する一連の訴訟のうち、第3訴訟(ご遺族から事務所に対する未払賃金請求訴訟)について、2021年9月7日(火)午後1時10分から、東京地方裁判所の判決が言い渡されました。
私たちの予想に反し、判決内容は、ご遺族側の請求の全面棄却でした。
第3訴訟の主要な争点は、大本萌景さんがアイドル活動に関連して従事していた「地産地消フェア」における「販売応援」が、労働基準法・最低賃金法における「労働者」といえるかどうかでした。私たちは、アイドル活動そのものに対して最低賃金法が適用されるべきと主張していたのではありません。アイドル活動(ライブ)に付随した「販売応援」という売り子業務に対する最低賃金の支払いを求めたものです。
東京地裁の佐藤卓裁判官は、「諾否の自由」(参加・不参加を自由に選べたかどうか)に偏重し、欠席したイベントや販売応援が存在したことを主な理由とし、活動を強制されておらず、諾否の自由があり、労働者ではないと判断しました。
私たちは、この判断は、「労働者性」が争点となったこれまでの様々な裁判例の判断枠組みを逸脱しており、不当な判決であると考えます。
所属事務所は、「地産地消フェア」にアイドルグループを「販売応援」として参加させ、多額の売上をあげていたにもかかわらず、裁判所はこの点を一顧だにしませんでした。これでは、アイドルなどの労働力を搾取することを容認する結果になり、特に、児童アイドルの保護がなされないこととなりかねません。
私たちは第1審判決を不服とし、2021年9月14日(火)に控訴いたしました。控訴審において正当な判決を得られるように、引き続き主張立証を尽くします。
なお、第3訴訟は先行して提起している第1訴訟とは目的や争点が異なります。第1訴訟では未成年者アイドルへの安全配慮義務が争点となっています。労働者性が肯定されるのであれば当然に安全配慮義務が認められますし、仮に労働者性が否定される場合であっても、裁判例上、事業者には一定の安全配慮義務が求められます。私たちは、未成年者アイドルの権利保障をより徹底するうえでは、安全配慮義務だけでなくその労働者性についても適正な司法判断がなされるべきであると考えています。私たちは一連の訴訟を通じて、未成年者アイドルの労働者性やその安全配慮義務の在り方について訴えてまいります。