【声明】芸能人の自殺について


2020年9月27日

【声明】芸能人の自殺について

COVID-19の影響による社会不安が続く昨今、広くメンタルヘルスの悪化や自殺に関する懸念が高まっています。警察庁による報告では8月以降自殺者の増加が報告されており、国においてもCOVID-19の感染拡大に伴うメンタルヘルスの悪化や自殺への影響に関する分析を進める方針であることが報じられています。
また、COVID-19の影響の有無は定かではありませんが、芸能人の自殺に関する報道も立て続いています。こうした情勢を踏まえて、私たちは「芸能人の自殺報道の取扱」及び「芸能人のメンタルヘルス」に関して以下のとおりの提言を行います。

1 WHO の「自殺報道ガイドライン」を踏まえた報道の徹底

社会的影響力を持つ著名人の自殺報道は、厚生労働省によるメディア関係者に対するプレスリリース記載のとおり、子どもや若者、自殺念慮を抱えている人に強い影響を与え、「後追い自殺」を誘発する場合があります。

各メディア機関は、自殺者の死因等の背景をいたずらに掘り下げるような取材はせず、センセーショナルな見出しを使わないなど、WHO(世界保健機関)による「自殺報道ガイドライン」を遵守した報道を強くお願いいたします。

2 芸能人のメンタルヘルスに配慮した取材・報道の徹底

芸能人の自殺報道後、一部報道機関において、その芸能人に関する憶測や虚偽の報道、又は芸能人の私生活の暴露など自殺した芸能人の名誉を毀損したり、プライバシーを侵害したりする報道がされています。こうした報道は故人やその関係者の権利を害するだけでなく、上記ガイドラインに抵触した過激な報道を助長するおそれがあります。

また、自殺した芸能人に関する報道に限らず、COVID-19の影響によるメンタルヘルスの悪化が懸念される昨今の情勢下では、芸能人に関する憶測や虚偽の報道、私生活の暴露が更なる精神的苦痛を与え、自殺行動を誘発させるおそれもあります。

各メディア機関は、あらためて芸能人の名誉やプライバシーに配慮した取材・報道を強くお願いいたします。

3 芸能人のメンタルヘルスケアの必要性

昨今、芸能人の自殺や事件報道等が相次いでいます。こうした事象が生じる背景要因は様々であり一概に論じられるものではありませんが、その要因のひとつとして高度のストレスに晒されやすい芸能人の業務特性が考えられます。

しかしながら、現状の法律では、芸能人の法的地位が曖昧にされていることから、そのメンタルヘルスケアや安全配慮の責任の所在も曖昧なままであり、法制度化に向けた議論や保護も十分になされていない現状にあります。

私たちは従前より、芸能人の権利に関わる問題のひとつとして芸能人のメンタルヘルスケアに関する制度的保障の必要性を訴えてきました。国においては、芸能人のメンタルヘルスの実情に関して早急に実態調査をし、メンタルヘルスケアの制度的保障の必要性について把握するべきです。

私たちは改めて国に対して以上の調査、対策を進めていくことを求めます。

以上
2020年(令和2年)9月27日
日本エンターテイナーライツ協会