【コラム】芸能トラブルのタレント側の解決方法 河西邦剛弁護士


2017年10月15日

こんにちはERA共同代表理事の河西です。 共同代表理事のなかでは、最も期(弁護士の経歴)も年齢も若い私ですが、比較的芸能トラブルの経験があるので、今回のコラムでは、私が芸能トラブルについて相談を受けた際に提案する解決方法(タレント側)についてお話しますね。

私は、芸能事務所サイドを代理することもかなりあるのですが、この点は後日。 タレント側からの相談で一番多いのは、『事務所が辞められない』『辞めると言ったら違約金を請求された』という相談です。

■ タレント本人の交渉を弁護士が裏でバックアップ

弁護士がタレントを代理して表に立ち、事務所側と代理交渉すると、事務所側もファイティングポーズをとり、態度が硬くなりますし、事務所にとって不利な証拠を取得することも難しくなります。 また、事務所側に弁護士がつくとひたすら交渉だけが続き泥沼化することがあります。

なので弁護士が表に立つのではなく、交渉方法をタレントに伝え、タレント本人で交渉するという方法です。これは対立が激化していない段階でよく使用します。

■ 弁護士がタレントを代理して交渉

弁護士がタレントを代理して、芸能事務所と交渉していきます。例えば、内容証明郵便を使用して、解除通知を送ったり、ネット上の記載の削除を求めたりします。弁護士がタレントを代理すると、タレント本人は事務所側と直接交渉する必要はなくなり、弁護士が窓口となることになります。

これは、相手方の事務所が中小規模の芸能事務所である場合や、報酬未払等の事務所側に明らかな契約違反がある場合に使用します。

■ 仮処分(契約関係にないことの確認等)

仮処分というのは、訴訟には時間がかかるので(場合によっては数年以上)、仮ではあるがとにかく早く辞めていること(芸能契約が解除されているという地位)を確認したいというときに使用する方法です。 裁判所を通じた手段になりますので、強制力があり事務所側が無視できないというのが任意交渉との違いです。

ただ、裁判所を納得させるだけの証拠が必要で、ネット上からの削除については担保金が必要になる場合があります。また、未払報酬請求や複雑な事案には不向きです。

■ 訴訟

契約解除されていることを明確に確定させたいというときに用いるのが訴訟であり、いわゆる法廷で行う裁判に該当します。契約解除、未払報酬、芸名の使用権、インターネット上の写真の削除、著作権等々の請求が多岐に渡る場合には、仮処分よりも訴訟手続が向いています。

また、事務所側から違約金を請求されている場合にはあえて債務不存在確認訴訟の提起という手段も考えられます。ただ、やはり場合によっては数年間かかる場合もあるのが難点です。

■ シンポジウムにて

非公開である調停という手続きを用いる方法もあったりします。今回は、芸能トラブルの争い方について簡単にお話しましたが、シンポジウムのパネルディスカッションではより詳しくお話させていただければと思います。

詳しい時間・場所等の詳細は、今後、このHP等でお知らせいたします。
【12/13 日本エンターテイナーライツ協会設立記念シンポジウム】「芸能界に交錯する光と闇」