【コラム】『タレントとの契約内容の明確化は、事務所の利益にもつながる』 向原栄大朗弁護士


2017年10月9日

タレントとの契約内容の明確化は、事務所の利益にもつながる 共同代表理事の向原です。

1 芸能事務所とタレントとの契約

タレントのは、通常、フリーランスの個人事業主として活動し、事務所とタレントの間は雇用契約という関係に立たないのが一般的なので、労働基準法が適用されません。

タレント側は、事務所側の決めたことや、契約したことには、タレント側にとっていかに不利益な条件も、タレントは、すべて従わなくてはならないのか・・・?という疑問が出てきます。

2 公正取引委員会の動き

この点については公正取引委員会(以下「公取委」といいます。)が8月4日に「人材と競争政策に関する検討会」を開催し、芸能界の問題(タレントの契約問題を含む)にもメスが入るのではないか、との報道が複数でなされています。

タレントの契約にまつわる問題で典型的なのは、
①移籍・退社禁止の問題
②移籍・退社時の違約金の問題です。

これらの問題について、公取委が今後どのような行政指導や処分を行うのかはまったくわかりません。

しかし、公取委が、タレントの契約問題に関心をもっていることはたしかなようです。 何らかの行政指導や処分が行われれば、公取委のHPにもその内容を公表されますから、当該事務所にも、レピュテーションリスクが発生します。

3 事務所としてはどうすべきか

公取委がこのような動きをしている以上、望むと望まざるとにかかわらず、事務所側は、公取委による行政指導・処分の対象にならないよう、以下の点に留意する必要があると考えます。

①タレントとの契約の内容が、タレント側に一方的に不利な内容になっていないか。また、事務所・タレント相互の権利義務関係が、不明確でないか。 もっとも、事務所側としては、その契約が一見タレント側に不利に見えても、たとえばそれが、当該タレントを売り出すための投資を回収するなどの合理的理由がどの程度みとめられるか、という点も問題になることから、契約の内容だけではなく、

②契約後のタレントの売り出し方や待遇全般 について、常に気を配る必要があるように思います。

4 タレントとの契約の内容等に気を配ることは、事務所にとって不利益なことなのか?

事務所側としては、契約でもってタレントをしっかりと管理しておきたいが、それに制約が生じることになり、一見不利益なように見えます。

しかしながら、芸能界には、明るいスポットライトが当たる反面で、契約内容が不明確であるとか、給与体系が不分明ではないかといった、マイナスイメージがあるのも事実です。 このようなマイナスイメージが、せっかくの逸材(あるいはその保護者)を、逃すことにつながっているのではないか。私はそのように思います。

前記3①②で述べたような点に事務所側が注意することは、単なる「法令遵守」にとどまらず、埋もれている人材を発掘し、その人達に安心して芸能界に入ってもらいやすい土台になりうるものでありますし、また、事務所にとっても、明朗な契約をしているという点で、レピュテーション向上に役立ちます。

したがって、タレントとの契約の内容等に気を配ることは、事務所側には、不利益ではないと考えるのです。

5 おしらせ

このコラムのテーマは、事務所とタレントとの契約内容の明確化です。 そこで、これをテーマにした演劇を、12/13に行います!

詳しい時間・場所等の詳細は、今後、このHP等でお知らせいたします。
【12/13 ERA主催:第1回シンポジウム開催決定】「芸能界の光と闇(仮)」

ぜひ皆様お誘い合わせの上、お越しください!