【コラム】セカンドキャリアの危険性と支援の必要性(2)桑原みずきパートナー


2017年7月5日

■セカンドキャリアの危険性と支援の必要性(2)
1回目のコラムでは、自己紹介、そして現在の活動などを書かせていただきました。その中で、「SKE」という肩書きを使いたいと寄って来た人に巻き込まれた話に触れました。

今回は、どのような手口で近寄ってきたのか、どのように進められていったのか振り返りたいと思います。

その人は、最初は自分の所属している会社、今回の企画に携わってくれるという会社、自分が担当したことのある歌手グループ、など全て私でも知っているような有名なものの名前を挙げてきました。 そこで、「本当ですか?証拠出してください」とは言えないし、聞いたことをそのまま信じていました。 そして高級なごはん屋さんで、あたかも仕事に対して熱い!一緒にやりたい!という風に演じてきます。 お金目当てではない、と思わされました。私はそこで事務所に「こんな話がある、やりたい!」と話をして、その人に関わることになりました。

今思うと、少しずつその人の思うように進められていったのだと思います。肝心の商品ができていないのに、予約イベントをやりたい、そのイベントにSKE卒業生を呼びたいと必死で説得されました。自分じゃ卒業生に声をかけられないから、私から連絡させようと気を引いてきました。 私は舞台本番直前で劇場入りしてて一日中忙しいと伝えているのに、「5分電話したい」「今日中に電話で話せなかったらこの話は無しにする」など、脅しを交えてしつこいくらいメールをしてきました。

「舞台に集中したいし、事務所に連絡先してください、私は事務所の人から後で聞くので」と何度も伝えました。 それでも電話電話と言ってきて、その時の私のストレスは半端なかったです。 不機嫌なまま電話をすると、「100万あげるから、その中でこの卒業生にオファーしてくれない?」と、断った話をまたしてきて、何人かの卒業生の名前を挙げ、お金をちらつかせてきました。 完全におかしいと思ったのですぐに事務所に報告し、最初と話が違う迷惑な提案は全て断り、戦っていく姿勢をとりました。

企画が進んでいくと、最初に言っていた有名な会社がこの企画についていないことや、いろんなところが関わってくれてると大掛かりな感じを装いながらその人が1人で全てやっていたことが判明しました。 その中で何度か言い合いになり、都合が悪くなったのか連絡が取れなくなりました。 私の他にこの企画にオファーされた卒業生も、最初は商品を作り、それに関するイベント(サイン会等)しかしないという約束でしたが、蓋を開けてみればグッズを販売したり、イベント終わりにどこで何をするのか知らされず車に乗せられ、ボイスサンプルを録られて配信されたり、ブログを始めさせられたり。 腹立たしい思いを何度もしました。

ネットニュースでも、「歌手になれるよ」という誘い文句でAVデビューさせられたという記事を読んだことがあります。 大なり小なり、そのような手口はこの業界で盛んに使われています。 このように最初と話が違う時、どこで疑うべきか、どこでストップをかけるかが私には分かりませんでしたし、そういう方は多いと思います。

「これやらなかったら、◯◯にはなれないよ」そんな言い方をして来ます。 幸い私は事務所も味方してくれましたし、おかしいところはおかしい、それはやりたくない!と意思表示していたので、相手は「こいつは言うことを聞かない」と逃げて終わったと思います。 ですが、後ろ盾がないフリーの方や、夢のためにと全部飲んでしまうような素直で弱い子にはもっと付け込んできて、過激な要求が続きます。

そのような経験をした方は、残念ながら多いと感じています。 意思表示をしていいということ、そして全て従うことが美徳ではないということを、今一度タレント側がしっかりと認識する必要があります。 巻き込まれた場合に取るべき行動をアドバイスしてくれる団体は芸能界にないので、タレント側も意識を変えられるチャンスだと私は思います。

次回のコラムでは、私が日本エンターテイナーライツ協会の記者会見でお話しさせていただいた、セカンドキャリアへの支援について書かせていただきますので、ぜひ読んでいただけると嬉しいです。

桑原みずき