【ご紹介】各判決に関する論文のご紹介


2024年8月1日

本件について、学者、実務家の方々より、次のとおり、多数の論文等が公表されておりますので、ご紹介いたします。

■第1訴訟(ご遺族から所属事務所に対する損害賠償請求訴訟)に関する論文
・山岡遥平弁護士 「裁判例研究 東京地判令4.6.9(判例集未搭載)農業アイドル自死事件~未成年者の自殺につき、裁判所等の安全配慮義務違反を否定した事案」季刊・労働者の権利 348号82頁以下
・笹沼朋子講師(愛媛大学)「ご当地アイドル活動とは何か―二つのHプロジェクト事件―(損害賠償請求事件東京高判令和4年12月21日判例集未搭載,賃金請求事件東京高判令4年2月16日2022WLJPCA02166007)」愛媛法学会雑誌 第50巻第1・2合併号 149頁以下

■第3訴訟(ご遺族から所属事務所に対する未払賃金請求訴訟)に関する論文
・水町勇一郎教授(東京大学・当時)「アイドルの活動参加への「諾否の自由」と「労働者」性――Hプロジェクト事件」ジュリスト1565号4頁以下
・鎌田耕一名誉教授(東洋大学)「タレントの労働基準法上の労働者性」季刊労働法280号230頁以下
・川口美貴教授(関西大学)「アイドルの労働基準法上の労働者性」民商法雑誌159巻1号183頁以下・和田一郎弁護士「タレントの労基法上の労働者性とその保護」労経速2469号2頁以下
・奥田隆文弁護士・山下泰周弁護士「判例紹介」MHM Culture & Art Journal-Issue 15-(2023年8月号 Vol.24) 8頁以下
・笹沼朋子講師(愛媛大学)上記「ご当地アイドル活動とは何か―二つのHプロジェクト事件―(損害賠償請求事件東京高判令和4年12月21日判例集未搭載,賃金請求事件東京高判令4年2月16日2022WLJPCA02166007)」愛媛法学会雑誌 第50巻第1・2合併号 149頁以下

いずれの論文でも第1訴訟、又は第3訴訟の判決に批判的であり、第3訴訟に関して、水町勇一郎教授は「年少者が学業や体調等を理由に仕事を休むことを認めることで労働者性が否定され年少者保護規制等が及ばなくなるとすると政策的にも深刻な事態を生む、という理論的・政策的な問題点も内包している。」(前記5頁)と評し、鎌田耕一名誉教授は、諾否の自由があったと認定したことについて「本判決には疑問がある」(前記201頁)、「『労務対償性が弱い』という本判決の判旨にも疑問がある」と批判し(同)、川口美貴教授は本件について「労基法上の労働者と解すべき」(前記191頁)と評しておられます。

また、第1訴訟に関して、山岡遥平弁護士は「本件では「未成年」という一言で片づけられているが、成人より高度な安全配慮義務の設定もありえただろう」(前記85頁)と本判決を批判し、また笹沼朋子講師は「家族の訴えをすべて退けたこれら判決から学ぶことは、ご当地アイドルという事業形態の危険性と、法的整備の必要性しかないように思われる」(前記164頁)と評しておられます。

以上