【声明】神田沙也加さんの取材、報道及び記事の配信について


2021年12月22日

【声明】神田沙也加さんの取材、報道及び記事の配信について

私たちは、各報道機関、週刊誌、配信会社等に対して、神田沙也加さんの取材、報道または記事の配信について、冷静かつ慎重な対応をすることを求めます。

今月18日、女優、歌手、声優の神田沙也加さんがお亡くなりになり、各報道機関等において連日にわたり報道をしております。しかし、私たちは、その取材や報道方法、特に一部週刊誌報道等において、神田沙也加さんのプライバシーを侵害する報道もあり、行き過ぎである面があると考えています。

取材方法や報道内容については、大事な家族を亡くしたばかりのご遺族を苦しめるものも多くあります。国民の多くの方々は、各報道機関や週刊誌等に対して、ご遺族や関係者を苦しるほどの取材も報道も一切期待していません。また、そのような記事の配信も期待しておりません。

私たちは、各報道機関、週刊誌及び配信会社等に対して、ご遺族や関係者のために、冷静かつ慎重な対応をすることを求め、今後、芸能人が亡くなられた場合の取材、報道及び配信に関して、遺族やご関係者に配慮した一定のルールを作ることを強く期待します。

言うまでもなく芸能人であっても私生活上の事項に関してはプライバシーの権利としての保護が及びます(憲法13条)。そして、これは死者であっても同様に私人のプライバシーの権利や死者の尊厳への配慮がなされるべきものだと考えます。死亡に至った原因等は特に機微な情報でありプライバシー保護が強く求められますし、反論の許されない中での憶測に基づく報道は、死者の尊厳を侵害するおそれがより高まります。また、死者の尊厳への配慮を欠いた報道等は、死者のみならずご遺族の私生活上の権利や尊厳をも脅かすおそれがあります。

事案によっては公益的要請から報道の自由がプライバシーの権利よりも優先される事態もあり得ると思いますが、少なくとも本件のような事案においてそのような公益性は見受けられず報道の自由はプライバシーの権利に劣後するものだと考えます。

社団法人日本民間放送連盟では、2001年12月20日付けで「集団的過熱取材(メディア・スクラム)問題に関する民放連の対応について」(http://www.j-ba.or.jp/category/topics/jba100553)という形で、取材上の留意点および対応策をとりまとめております。これによりますと、「②死傷者を出した現場、通夜・葬儀などでは、遺族や関係者の感情に十分配慮する。」とし、「集団的過熱取材に至り被害を発生させないように、まず、各社内および系列内において、社会情報系を含め、記者、ディレクター、カメラマンの数を調整するなどの措置を具体化する。さらに、現場に集まった取材者がメディアの枠を超えて新聞やNHKなどとともに問題解決のための方法を模索し、被害の回避に努める。」としています。

私たちは、各報道機関及び週刊誌に対して、改めてこの対応を徹底すること、またプライバシーを保護すること、配信会社に対して、被害の拡大に繋がる記事を配信しないことを強く求めます。

最後になりましたが、私たちも神田沙也加さんに対して、ご冥福をお祈りいたします。

2021年12月22日 日本エンターテイナーライツ協会 理事一同