【声明】大杉漣さんの取材及び報道について
私たちは、各報道機関及び週刊誌等に対して、大杉漣さんの取材または報道について、冷静かつ慎重な対応をすることを求めます。
今月21日、人気俳優の大杉漣さんがお亡くなりになり、各報道機関において連日にわたり報道をしております。しかし、私たちは、その取材や報道方法において、行き過ぎである面があると感じております。
確かに人気俳優である大杉漣さんの訃報は、大変多くの方々に強い悲しみと驚きを与えました。そして、その亡くなられた理由について知りたいと思う方々も多いと思います。しかし、死因は芸能人としての側面ではなく、一人の人間としてのプライバシーに関するものです。その取材方法や報道内容については、大事な家族を亡くしたばかりの遺族を苦しめるものも多くあります。国民の多くの方々は、各報道機関や週刊誌等に対して、遺族や関係者を苦しるほどの取材も報道も一切期待していません。
私たちは、各報道機関及び週刊誌等に対して、遺族や関係者のために、冷静かつ慎重な対応をすることを求め、今後、芸能人が亡くなられた場合の取材や報道に関して、遺族や関係者に配慮した一定のルールを作ることを強く期待します。
言うまでもなく芸能人であっても私生活上の事項に関してはプライバシーの権利としての保護が及びます(憲法13条)。そして、これは死者であっても同様に私人のプライバシーの権利や死者の尊厳への配慮がなされるべきものだと考えます。死亡に至った原因等は特に機微な情報でありプライバシー保護が強く求められますし、反論の許されない中での憶測に基づく報道は、死者の尊厳を侵害するおそれがより高まります。また、死者の尊厳への配慮を欠いた報道は、死者のみならず遺族の私生活上の権利や尊厳をも脅かすおそれがあります。
事案によっては公益的要請から報道の自由がプライバシーの権利よりも優先される事態もあり得ると思いますが、少なくとも本件のような事案においてそのような公益性は見受けられず報道の自由はプライバシーの権利に劣後するものだと考えます。
また、社団法人日本民間放送連盟では、2001年12月20日付けで「集団的過熱取材(メディア・スクラム)問題に関する民放連の対応について」(http://www.j-ba.or.jp/category/topics/jba100553)という形で、取材上の留意点および対応策をとりまとめております。これによりますと、「②死傷者を出した現場、通夜・葬儀などでは、遺族や関係者の感情に十分配慮する。」とし、「集団的過熱取材に至り被害を発生させないように、まず、各社内および系列内において、社会情報系を含め、記者、ディレクター、カメラマンの数を調整するなどの措置を具体化する。さらに、現場に集まった取材者がメディアの枠を超えて新聞やNHKなどとともに問題解決のための方法を模索し、被害の回避に努める。」としています。私たちは、改めてこの対応を各報道機関を徹底し、また週刊誌等の取材も被害の回避に努めることを求めます。
最後になりましたが、私たちも大杉漣さんに対して、ご冥福をお祈りいたします。
2018年(平成30年)2月24 日本エンターテイナーライツ協会 共同代表理事一同