【コラム】『契約期間中に事務所を辞めることができるのか』河西邦剛弁護士


2017年5月14日

ERA代表理事の河西(かさい)です。
初めての挨拶になりますので少し自己紹介をさせていただこうかと思います。
弁護士登録以降、特に芸能トラブルを専門的に扱っていることからERAの立上げ参画に関わることになりました。

私自身、タレントを代理して芸能プロダクションと交渉や訴訟をした経験は、他の弁護士と比較した場合にも少なくないと自負しています。そんな経験を活かしてタレントに対する搾取を防ぎ、エンターテインメントの発展に寄与していきたいという思いでERAに参画しました。というわけで、ERAにおいては、タレントの方との窓口になることが多くなると思いますので、是非よろしくお願いします。 

さて、よく受けるご相談の内容として「契約期間中に事務所を辞めることができるのか」というご相談を受けることがあります。

これについては様々な類型があり、一概には断定できませんが、ほとんどの裁判において、契約期間中であっても、タレントは途中で事務所を辞めることができるとされています。判例時報にも掲載され話題になった「アイドルの恋愛禁止裁判(東京地裁H28.1.18」においても、芸能プロダクションとタレントとの契約は途中で解約できる契約類型とされています。実は私、実際の裁判記録を閲覧しているのですが、この裁判では「契約を解除します」という旨の手書きの内容証明郵便が到達したことをもって、裁判所は、タレント側からの解除の効力が生じたと認定しています

もっとも、芸能トラブルを多数経験している弁護士の視点からいうと、いくら法律論で勝っても、芸能界のルールに負けてしまっては意味がありません。実際問題としてその後の芸能活動ができなくなるからです。また、芸能プロダクションもタレントの売り込みに多額の投資を費やしている場合も少なくありませんので「理由もなくなんとなく嫌だから辞める。」というのは論外です。「事務所を辞める」「事務所とのマネージメント契約を解除する」という場合には、所属プロダクションの性質や、タレントの今後の活動方針に合わせて、「事務所との交渉方法」について慎重に判断する必要があります。

というわけで、今日は触り程度の知識の紹介ですが、今後も私のブログ等で紹介していきますので参考にしてください。

よろしくお願いします。 

代表理事 弁護士 河西邦剛